ミッドガルド
トータルバランスド栄養食を謳うチョコレート味の煉瓦と、フリーズドライの野菜がたっぷり入ったカップスープを口にしながら仕事に向かう。
どちらも効率性というか、インスタントな利便性を追求した食べ物ではあるのだけど、与えてくる印象は真逆に近い。
チョコレート味の煉瓦の方は最近流行りの完全栄養食というやつで、よくインターネット上では『ディストピア飯』などと綽名される類のもののひとつだ。
味は決して悪くなく、腹持ちも良く、直ちに実感することはないが栄養価にも優れており、食感が固まり始めの粘土のようであることを除けば、実に理に適った食べ物であることは間違いない。
これがディストピアで民に平等に配給される食事というのは、言い得て妙であると改めて思う。
対してカップスープの方は、野菜を食べたという実感と気休め以外のメリットは完全栄養食に劣る。
劣るが、ユートピアとは行かないまでも、どうせ生きて食事を摂り続けなければならないのであればこっちだな、という感覚をスプーンのひと掬い毎に与えてくる。
仕事をしながら片手間にとった食事ではあるが、身体的充足と心理的充足の間には隔たりがあるということ、そして前者に関しては獲得のための近道が比較的多く存在し、後者には愚直ににじり寄らねばならない、ということを何とはなしに僕に悟らせた。
Ete Fuete
僕は決意表明が得意で、お膳立てが得意で、形から入るのが得意で、入念な準備が得意で、序文を読むのが得意で、予習が得意で、目標を立てるのが得意で、浅瀬を歩くのが得意で、触ってみるのが得意で、齧ってみるのが得意で、
そしてそれ以外は全部苦手だ。
決して短くないこれまでの暮らしの中で、得意なことはいくらでも、何度でもやってきた。
だからもし、得意なことだけやってきたことで行き詰まった日々をこじ開けるための道具が隠されているのなら、それは苦手なことの中にあるのだろう。
そういうわけで、一番苦手な、続けるということをどうにかやっていきたい。
この手のブログにこういった宣言を綴るのは一体何回目か、いつからか数えるつもりもなくなってしまった。
だって、決意表明はこの上なく得意なのだから。